どんな仕事にも専用の特殊な道具というものがあります。
サルトも例外ではありません。

今回日本に帰った時に無くて一番困ったのが、写真の道具でした。
小箱にカミソリがいっぱいセットされただけのそれはそれは原始的な道具です。

サルトは生地の上にチョークで線を引いて仕事を進めるわけですけれども、
何回も線を引いていくと鉛筆と同じように先が丸くなってきてシャープな線が引けなくなってきます。

そんな時にこの道具でチョークを研ぐんです。

たったこれだけのモノですが使う人のクセがついてきて個体差が出てきます。
前に勤めていたサルトリアでは一個お気に入りのものがありました。
固定された歯の遊びとか、
歯の鋭さとか、
実際に使っていると微妙なことが気になるものです。
その自分にしっくりくる「お気に入り」を使っている間は、もったいないという気持ちもあって、またよく削れるもんだからついついチョークが昔のメモリースティック®ぐらいになるまで研いでいると、
「こんなもんで仕事になるか!」
とマエストロに見つかっては怒鳴られたもんです。
彼らは、「いい仕事のためだ!」と言って小さくなったチョークは惜しげも無く捨てていましたね。

現在イタリアでも、このチョーク研ぎは生産中止で入手できません。
こんな一見小さなモノ一つとっても業界の先細りが見て取れます。

いくら使う道具が少なかろうと、良い針やハサミ、アイロンがなくてはどんな腕のいいサルトもお手上げです。
やはり何とかしてこの文化を正しいカタチで遺さないといけないと感じます。

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