ひとつ前のポストでNATALEについて書きました。
その中でパネットーネという伝統菓子についてすこし触れました。
これはクリスマスシーズンに食べるミラノの伝統菓子です。ちなみに夏の野外オペラやロミオとジュリエットで有名なベローナではパネットーネではなく少し背の高いパンドーロが伝統菓子となります。
以前勤めていたサルトリアではこのシーズンになると職場のみんなでパネットーネとスプマンテでお祝いする慣習がありました。
皆と言っても小さなサルトリアでしたから総勢でも7・8人程度でした。
いつもきまって昼食後、2時半頃になると職場の女の子が時間を気にしながらいそいそとボスの買ってきた(前出のSant’Anbroeusで)パネットーネをアイロン台の下の棚にしまいこむのです。
そしてしまい終わるとまた何事も無かったかのように黙々と仕事を再開します。
そしてまた30分程経つと、彼女がまたいそいそと動き始めます。今度は会場の設営準備です。といっても、工房の隣の小さな一室が臨時会場になるだけのことですからテーブルが汚れないように紙を敷いて、人数分のグラスを用意します。
その準備が終わるとボスから皆にお呼びがかかります。
やりかけの仕事にちょっと後ろ髪を引かれながらも自分の椅子を持って隣の小部屋に移動して用意万端整ったところでさっきのパネットーネのご登場です。
パネットーネは食べる前に少し、ゆっくりと温めると中がふんわりモッチリとしておいしくなります。袋が水分でうっすら曇るくらいがベストです。
これの為に彼女はパネットーネを温めるタイミングを逆算していたのです。アイロン台の下はアイロンの熱でいつもじんわり温かいので普段は皆家から持って来た弁当なんかを入れて保温していましたが、この時ばかりはパネットーネ保温器になる訳です。
切り分けてもらったパネットーネとスプマンテを前に、まずはボスが簡単なあいさつとして、僕たち従業員に日頃の仕事への感謝を述べて皆で乾杯、AUGURI(おめでとう)。
母親が敬虔なクリスチャンだった為に洗礼も受けていたボスでしたがあまり信仰心というものは持っていませんでした。それでも家庭教育で得た豊富な宗教知識に始まって、他を巻き込んだ宗教談義が始まる。
そんな小さな催しが復活祭との年2回ちゃんと行われていました。
小さかったけど、その分とてもアットホームで、真面目な本当にすばらしいサルトリアでした。